僕に出来ること

自分に何が出来るのだろうか?

きっと、はじまりはこんな感じだった。

最初の職場で自分に出来たことと言えば、
ごみ捨て、鍋洗い・・・
何も出来ない自分は、ただただ無力な存在だった。

そんな日々が3年過ぎる前に、僕はひとりフランスへと渡った。

きっと、そこにはナニカが在って、その新しい世界の中で、
僕は、足りないナニカを見つけることが出来るのではないか?

漠然とそう思う自分と現実から逃げ出した自分がそこに同居しながら、
仕事もなく、ただ考え事をするだけの毎日が暫く続いた。

22歳の自分。

その頃、自分に何が出来るか?を必死に探していたけど、
何もない毎日は、何も見つけることも出来ず、何もないという
事実を現実として知るだけだった。

自分に何が出来るのだろうか?

帰国して、また料理の仕事を始めた。

結婚し、子供もできた。

少しだけ、ナニカが出来るような・・・
ナニカが出来ている・・ような。
そんな頃だったかもしれない。

職場を変えた。

24歳になった自分は、新しい環境で仕事に夢中になった。

一度、料理を辞め、料理人には向いていないと思っていたのに、
僕は、仕事に夢中になったいたし、何でもやろうと思っていた。

役立たずで何も出来なかった自分を乗り越えられたような、
そんな錯覚をしていた頃かもしれない。

若者には、可能性がある・・と言うが、果たしてホントだろうか?

確かに選択肢は、多いかもしれないし気力も体力もある。

だけど、術を持たない若さだけが取り柄の人間に一体ナニが出来るのだろう?

気づけば30を過ぎ、独立。

そして、40を過ぎ、今、50歳が目前となった。

19歳で社会に出て、30年が過ぎようとしている。

僕に何が出来たのだろうか?

なんでも出来る・・・そう信じたこともない自分は、
結局、料理だけは出来るようになり、それが生活を支え、
そして、人生を支えている。

僕が若い頃、なんでも出来る、自分には可能性がある・・
もし、そんな風に思えたなら、ナニカ変わったのだろうか?

僕には、はじめから何もない。

でも、なんかひとつでいい。

なんかひとつ出来ることがあったら、もしかしたら
自分と他人を幸福にする術になるかもしれない。

30年、自分なりに必死で、そして、なんとなく・・
この道を進んで、今思うのは、そんなことだろうか?

自分に出来ることをひとつだけ見つけた。

それぐらいの人生。

その本当の価値にいつか気づけるような気がしている・・・